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安心R住宅連載コラム 第八回

2024/08/08

安心R住宅連載コラム 第八回

#住まい #メンテナンス #リフォーム #リノベーション #省エネ

寄稿者

中山 登志朗

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

LIFULL HOME’S総研、兼安心R住宅認定団体「安心ストック住宅推進協議会」理事の中山です。

前回は安心R住宅のメリットと主に売却する際の手続き上の課題について考えました。今回はその手続きの実際について、最も重要な「安心R住宅調査報告書」の内容について詳細を見ていきます。調査報告書に記される項目などについて理解しておけば、安心R住宅に認定されるメリットが理解できますし、実際に売却する際にも有利です。調査報告書の内容は多岐に渡りますから、前後編に分けてお伝えします。

「安心R住宅調査報告書」とは基準に適合しているか調査した結果を記載した書面

安心R住宅の認定を受けて売却することのメリットは、前回改めて詳細にお伝えしましたが、安心して買ってもらうためには、物件の現況を調査し、安心R住宅の認定基準をクリアしているかを確認する必要があります。その調査結果をまとめて書面にしたものが今回ご説明する「安心R住宅調査報告書」で、この書面がないとそもそも安心R住宅であるかどうかがわかりませんから、最も重要な書面です。

安心R住宅の認定を受けるには、耐震性、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準への適合、リフォーム工事の実施状況ほか、この住宅に関する書類(建築時の情報、維持保全の状況に関する情報、保険・保証に関する情報、省エネルギーに関する情報など)の「有」「無」「不明」の別などを調査し、その状況を買主に分かるように一覧性の高い書面にすることが求められています。

ただし、「安心R住宅調査報告書」は宅地建物取引業者(=報告者)が確認した結果を記載したもので、情報の正確性について登録事業者団体(=安心R住宅認定団体)や国が保証するものではありませんから、記載内容については、売買契約を締結する前に買主自身が確認する必要があります。もちろん買主が住宅を見て何か不具合を発見することなどはできることではありませんから、専門家であるインスペクターに依頼してチェックしてもらいましょう。


安心R住宅連載コラム 第八回

「安心R住宅調査報告書」に記載されている内容は?

次に、「安心R住宅調査報告書」で買主に提供される情報を項目ごとに紹介します。

まずは、その住宅の「建築時の情報」です。具体的には、建築確認申請書と図面などの添付図書・確認済証、検査済証、台帳記載事項証明書、法適合状況調査報告書などの有無(もしくは不明:以下同)が記されます。また長期優良住宅などの認定住宅である場合には、長期優良住宅認定通知書・建築証明書などの有無についても記載されます。併せて住宅性能についても設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の両方の有無も記載対象です。他にはフラット35適合証明書や竣工した段階での設計図書の有無なども記載されます。


次に「維持保全の状況に係る情報」です。これは主に管理面での書面で、例えば長期優良住宅建築等計画などの物件の維持管理に関する書面、建物状況調査結果報告書、定期調査報告書、認定長期優良住宅の建築及び維持保全の状況に関する記録、浴室・便所・台所等の設備の使用の可否、給排水管・設備の検査結果、定期保守点検の結果、特定保守製品の点検の実施状況及びその結果 など、多岐に渡ります。また、戸建のみで良いとされていますが防蟻に関する情報の有無が記載されます。防蟻とはシロアリ対策、蟻道が見つかった際の駆除実績などのことです。最近ではマンションでも押し入れや収納など内装部分にシロアリが発生することがありますから、特に冬でも温暖な西日本の住宅については必要な項目になると考えられます。なお、過去実施していれば、維持修繕に関する実施状況の記録やリフォーム工事・改修に関する書類なども対象になります。


続いて「保険または保証に係る情報」です。これは構造上の不具合および雨漏りに関する保険・保証に関連する書類として、安心R住宅で加入できる既存住宅売買瑕疵保険の申込み状況に関する書類や給排水管、設備、リフォーム工事、シロアリなどの保険・保証書面があればその有無を記載します。


安心R住宅連載コラム 第八回

さらに「省エネルギーに係る情報」も重要です。上記に倣って長期優良住宅であれば、長期優良住宅認定通知書・認定長期優良住宅建築証明書などの有無が記載されますし、他にも、設計住宅性能評価書、建設住宅性能評価書、基準適合認定制度のeマーク、BELS第三者認証マーク、住宅省エネラベル、CASBEE評価認証票、環境共生住宅認定書、フラット35S適合証明書などがあれば、優良物件であることを細大漏らさず記載する必要があります。関連項目としては開口部(=窓)が複層ガラスや二重以上のサッシなどの場合は、それも記載します。もちろん、省エネ関連設備として高効率給湯器、太陽光発電システム、太陽熱利用システム、家庭用燃料電池などが設置されていれば記載します。


最後に、これはマンションの場合ですが、「共用部分の管理に係る情報」も記載項目です。修繕積立金の積立状況に関する情報(修繕積立金会計資産総額および滞納額)や大規模修繕の実施状況の 記録(共用部分等の修繕実施状況)が記載対象になります。


ちなみに、住宅履歴情報を提供した機関に関する事項(機関名や連絡先)、登録事業者団体独自の取組(定期点検サービス、住宅ローンの金利優遇等)、過去に国、自治体などから補助金等の交付を受けた実績に関する書類、などがあれば、これらも全て記載しておくべき情報となります。


「安心R住宅調査報告書」で提供される情報

出典:国土交通省ウェブサイト


「安心R住宅調査報告書」に記載される項目だけ列挙しても、これだけの数(大項目5/中項目17)に上りますから、買主に安心を提供すると一口で言っても、書面を揃えて確認し、その有無および不明であることを報告書に記載するのはなかなか大変な労力です。換言すれば、これだけの手間をかけることによって中古住宅の安全性や安心感を担保できれば、売買において確実に有利な条件になることも理解できることと思います。一言で言えば、住宅の購入、維持管理、修繕&改修履歴、設備、省エネ関連など、その住宅に関する全ての書面を用意し、提供するということとほぼ等しいとお考え下さい。


次回は、この「安心R住宅調査報告書」のそれぞれの項目について、特にチェックするべきポイントを解説します。

中山 登志朗(なかやま としあき)

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

出版社を経て1998年よりシンクタンクにて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間数多くの不動産市況セミナーで講演。
2014年9月にHOME'S総研(現:LIFULL HOME'S総研)副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。

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