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安心R住宅連載コラム 第二回

2023/04/01

安心R住宅連載コラム 第二回

#住まい #メンテナンス

寄稿者

中山 登志朗

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

LIFULL HOME'S総研、兼安心R住宅認定団体「安心ストック住宅推進協議会」理事の中山です。第一回は安心R住宅とはそもそもどのようなものなのかをご説明しましたが、二回目はやや踏み込んで、安心R住宅と一般的な中古住宅(既存住宅)では何が違うのかを知ることによって、具体的に安心R住宅のメリットについて理解を深めていきましょう。

安心R住宅に認定されると・・・

外見上、一般的な中古住宅と安心R住宅には何も違いはありません。ポイントは見かけではなくて、名前の通り“購入後も安心して購入できるか&住み続けられるか”ということです。ご自身のお住まいを売却する際に安心R住宅に認定されれば、それは認定機関がチェックして基準を満たしていると“お墨付き”を与えてくれたようなものですから、住宅の品質についてまさに安心できる水準にあることを客観的に証明したことになります。この客観的にというのが大変重要で、売主や不動産仲介を担当する不動産会社が安心・安全だと主張するだけでは、それは残念ながら信頼性に欠けますが、安心R住宅は第三者が建物を検査して評価する仕組みですから、客観的にその安心・安全が保障されているのです。例えば、耐震性能については、1981年6月に改正された現行の“新耐震基準”に適合していなければなりませんし(万一適合していなければ耐震改修が必要です)、柱や壁、屋根、開口部、外壁などもその品質が定められているため、これらについて専門家が実施するインスペクション(建物検査)によって問題がないことが証明されている必要があります。

この証明によって、瑕疵保険(売却後に発生したトラブルについて保険金が下りる仕組み)に加入可能になったり、住宅ローン減税の対象になったりしますから、経済的メリットも極めて大きいと言えます。

また、安心R住宅は多くの場合リフォーム済みで売却されます。リフォーム済みでない場合はコストが記載されたリフォームプランが用意されていなければなりません。もちろん、実際に物件を内覧するのは当然のこととして、その際に専門家であるインスペクターに同行を依頼すれば(有料です)適切なアドバイスを受けることができますから、購入者側も安心材料が増えます。

さらに、安心R住宅は売却する際に、購入希望者に対して可能な限り過去の点検記録などの保管状況を開示しなければなりません。過去の修繕や改修、点検記録があれば、その住宅の物理的な強度(あるいはウィークポイントも)イメージすることができ、それを専門家と共有することによって将来の修繕計画に活かすことが可能になります。例えば、検査基準の適合状況や保険や保証に関する情報、マンションなど区分所有物件の場合は共用部の管理状況などについて、物件広告時にはこれらの情報があるか否かの開示、買主との交渉時にはこれらの情報の詳細を提示する必要があります。


手間は多少かかっても安心して買って&住んでもらえるのが最大のメリット

上記の通り、安心R住宅に認定されると、具体的に購入希望者に安心・安全という目に見えないメリットを提供することができるので、流通市場に出した際に早く購入者が見つかる可能性が高まります。言葉を換えると安心感をアピールすることによって他の競合物件と差別化することができ、それが早期売却に結び付きやすいということです。市場に出して成約するまでの期間が短ければ価格交渉や価格改定の余地が少なくなりますから、売主の希望する価格で売却できる可能性も高まるという訳です。

実際の住宅流通市場において安心R住宅はまだ数が少なく、買主サイドの認知も極めて高いとは言えませんが、物件の品質・状態について客観的な“お墨付き”がついている住宅、それが安心R住宅なのだとご認識いただくと良いと思います。

なお、2020年4月に民法が改正され、これまで住宅売買においては隠れた瑕疵(=見えないトラブル箇所)があった場合に“瑕疵担保責任”が問えることになっていましたが、改正後は契約書に記載の内容と実際の物件の状況が異なっていれば、売却後一定期間は売主が責任を負わなければならない“契約不適合責任”に改められました(任意規定なので契約書で期間を定めたり責任を負わない旨を記載することもできます)。安心R住宅は、その点において、売却する物件について詳細な情報を相手に開示しなければなりませんから、契約不適合責任を問われる場面は事実上想定しにくく、結果的に売却後のトラブルを圧倒的に少なくできるというメリットもあります。

ただし、安心R住宅の認定を受けるためには、その認定団体に申請をし、専門家にインスペクションしてもらい、必要があれば補修する必要が出てくる可能性もあります。つまり安心R住宅である旨の“名称取得コスト”が発生することも考慮しなければなりません。これはケース・バイ・ケースですが、不動産会社によっては専任媒介契約を結ぶとインスペクション費用を取らなかったり、成約すればコスト負担不要だったりすることがありますので、安心R住宅についてご関心のある方は認定団体のウェブサイトなどから検索してみることをお勧めします。

中山 登志朗(なかやま としあき)

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

出版社を経て1998年よりシンクタンクにて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間数多くの不動産市況セミナーで講演。
2014年9月にHOME'S総研(現:LIFULL HOME'S総研)副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。

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