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安心R住宅連載コラム 第五回

2024/01/12

安心R住宅連載コラム 第五回

#住まい #メンテナンス #リフォーム #リノベーション #省エネ

寄稿者

中山 登志朗

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

LIFULL HOME’S総研、兼安心R住宅認定団体「安心ストック住宅推進協議会」理事の中山です。

今回は2024年を迎え、年初にあたって安心R住宅を含めて今後中古住宅流通市場がどのように変化していくかについて考えます。
新築住宅は円安の影響が強く働き、昨年特に東京都心周辺では、新築マンションが一時平均1億円という高額な状況になりましたが、中古市場はやや異なります。

中古住宅の価格も上昇基調
今後は住宅の品質が価格のバイアスに

2023年春には新型コロナの分類が2類から5類に移行し、それに伴って移動制限も撤廃されたことを受けて、住宅市場はコロナ前の勢いを徐々に取り戻し、またインバウンドの需要も顕在化したことで、都市圏ごとの価格相場が上振れし始めました。同時に、世界的なサプライチェーンの逼迫で資材やエネルギー、食糧価格が上昇し、日米欧の金融政策の違いによる円安も依然として継続していますから、今後も特に新築住宅の価格が上昇、もしくは高止まりすることが考えられます(2024年は徐々に円安が収束すると予想されます)。また“建設業の2024年問題”=建設に従事する労働者の残業時間に総量規制がかかるため、4月以降は労働力不足による工期の遅れや人件費の上昇も想定されており、コストプッシュ型の価格上昇はまだまだ続きそうです。

このような要因で新築価格の上昇が続く以上、中古住宅にニーズがシフトして市街地中心部の物件や築年数の浅い物件を中心に価格が上昇し続けることはほぼ確実です。つまり、現在居住・所有されている住宅を売却するタイミングとしては良いと言えますが、一方で購入物件もダウンサイジングや郊外方面への転居を前提としない限り、価格が上がっていくことをイメージしておく必要があります。



中古住宅市場に新型コロナの影響はほぼ皆無
ただし居住エリアには大きな変化

コロナ禍が継続していた2022年上半期までは、中古住宅市場は徐々にコロナ前に戻りつつあった状況にあっても、依然としてコロナ前を超える市場規模の拡大は見られなかったのですが、2022年秋以降は本格的に物件数が増え始めました。一時的に物件価格の頭打ち傾向はあったものの、新築物件の価格上昇が顕著になったことから2023年以降は価格も明確に強含んでいます。

新築・中古共に物件価格が上昇したことで進んだのが、一時的と思われていた“コロナ禍での避難先”である各都市圏の準近郊&郊外エリアでの居住スタイルの定着です。特に子育て世代である30代半ば以降のファミリー層は、折からの消費者物価の上昇もあり、比較的生活コストが安価な準近郊&郊外での生活を選択するケースが増えたのです。当初はコロナ禍を避けるための一時的な生活手段と考えられていた郊外方面での居住ですが、コロナ後もテレワークが継続していること、住宅価格および賃料の高騰が都心・近郊を中心に進んでいて居住ハードルがさらに高くなっていることなどを主な要因として、ファミリー層の郊外定着を現実のものとしたのです。

以上が“コロナ明け”の中古住宅市場ですが、圏域ごとにその状況や背景は異なります。首都圏では上記の通り人流の郊外化がファミリー層を中心に定着し(単身者は都心回帰)、近畿圏では対照的に大阪市とその周辺に一極集中、中部圏では首都圏および近畿圏への人口流出が発生しており、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方四市を始めとする地方圏政令市や中核市では大阪同様に一極集中が明確になっています。都市圏としての規模に違いがあるため、最も大きい首都圏では都心周辺が富裕層と若年層単身者の住宅、準近郊&郊外が専らファミリー向けというように二極分化し、規模が小さいエリアでは各中心市街地に人流が集中しているのです。人の流れが変化すれば、エリアごとの住宅需要も変化しますから、住み替えのタイミングもよく検討することが重要です。


加えて、今後大きな要素としてクローズアップされるのが、前回のコラムでもご紹介した“住宅の省エネ・断熱性能”に関わる件です。

2025年4月の省エネ基準適合義務化に先駆けて、1年前の2024年4月から省エネ性能表示制度がスタートするのは前回お伝えした通りですが、表示ラベルでエネルギー消費等級と断熱等級、それに年間の光熱費の目安が記載されることになっていますから(第三者評価/自己評価/住棟・住戸の別などで表示内容に違いがあります)住宅性能が一気に可視化されることになり、物件本体の価格(イニシャルコスト)と共に光熱費(ランニングコスト)がわかるようになれば、トータルでのコスパが強く意識されるようになるのは当然のことと思われます。

住み替えについては物件の立地条件、交通条件、周辺環境、安全性、居住快適性などに加えて、省エネ・断熱性にも意識が向くようになりますから、今後はたとえ安心R住宅であっても、省エネ・断熱性能に劣る住宅は資産性が下がってしまうことが考えられるのです。

ご自身の居住される住宅について、耐震性があって、インスペクションも済んでいて、雨漏りもなくリフォーム済みであること=安心R住宅であることにインセンティブがあることは変わりませんが、今後は省エネ・断熱性にも大いに関心を持っていただき、必要な省エネ改修などをご検討いただきたいと思います。

中山 登志朗(なかやま としあき)

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

出版社を経て1998年よりシンクタンクにて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間数多くの不動産市況セミナーで講演。
2014年9月にHOME'S総研(現:LIFULL HOME'S総研)副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。

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