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安心R住宅連載コラム 第七回

2024/07/03

安心R住宅連載コラム 第七回

#住まい #メンテナンス #リフォーム #リノベーション #省エネ

寄稿者

中山 登志朗

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

LIFULL HOME’S総研、兼安心R住宅認定団体「安心ストック住宅推進協議会」理事の中山です。

今回は中古住宅市場における安心R住宅の現状と、少しずつですが普及が進んでいる状況を踏まえた上で、さらに普及していくため解決するべき課題は何か?を考えてみたいと思います。安心R住宅の制度を詳しく知ることで、その大きなメリットに対して売却の手間がどの程度発生するものなのか、そしてこの手間が負担に感じることはないのか、是非“自分事”としてお考え下さい。

市況感:円安や人件費の高騰で新築住宅価格が高騰 連動して中古住宅も価格上昇

現在の住宅市場は、欧米のインフレ対策として始まった金利引き上げによってドルやユーロが買われ、円が売られるという円安の継続によって、その多くを輸入に頼る建設資材の価格が高騰しています。また2024年4月から適用された運輸業・建設業の就労者への残業規制=2024年問題が顕在化し、コロナ禍で数多くの就労者が離職や引退をしたことも手伝って、人件費の上昇が止まりません。

このようなコスト・プッシュによって新築住宅の価格は2021年以降明確に上昇し続けているわけですが、これに連動して中古住宅の価格も上昇しています。これは価格上昇で新築住宅の購入を断念したユーザーが中古住宅を購入、リノベーションして住むことを選択しているケースが増えているためです。したがって、安心R住宅が目指す中古住宅の安心感やリフォームの有無など比較検討する以前に、立地条件や周辺環境、築年数と価格のバランスが取れている物件からすぐに売買が成立する状況で、結果的に安心R住宅制度の活用を検討する前に売却が進んでいるのです。

本来、安心R住宅という制度は、どういう状況にあるかわからないという中古住宅の不安を払拭し、安心して購入できるように情報開示する仕組みですから、現状のような中古住宅に対する“買い進み”が落ち着けば、中古住宅の品質にもユーザーの目が向くものと考えます。


安心R住宅連載コラム 第七回

改めて考える安心R住宅のメリット ただし様々な課題感もある

言うまでもなく安心R住宅の最大のメリットは、確かな根拠に基づいた安心感です。第三者である専門家(インスペクター)が住宅の状態を確認し、確認時に指摘事項(何らかの不具合)がある場合は、それに応じて必要なリフォーム工事が実施され(もしくは見積もりを含めたリフォーム提案)、リフォーム工事が完了して再度確認した後は、「既存住宅売買瑕疵保険」にも加入できます。この保険は、仲介事業者が独自に買主に対して“保証”するのではなく、引き渡し後に発生したトラブルについて保険金を支払う制度ですから、さらに安心感が高まります。

また、断熱性や省エネ性など、住宅性能を高めるリフォーム工事を実施した場合、内容や条件によって「住宅ローン控除」や「住まい給付金」などの対象にもなるため、結果的にお得に購入できることにも繋がります。さらに、売主にも安心感が高い住宅であることが理解されれば、早期に売却できる=値下げしなくても売却可能という点にも期待が持てます。


まさに“良いこと尽くめ”な印象の強い安心R住宅なのですが、安心を買主に提供するために、一種の制約のようなものがあることも事実です。 実は、安心R住宅は専属専任もしくは専任媒介以外の契約の選択肢がありません。住宅の売却をする際には不動産会社と媒介契約を結びますが、依頼者である売主は複数の不動産会社と同時に契約可能な“一般媒介契約”を結ぶことができず、1社だけと媒介契約を結ぶことになります。また、依頼者が自ら購入者を見つけて、直接、売却することも制限されています。つまり、安心R住宅の制度を熟知した不動産会社に頼らざるを得ないのですが、その事業者を見つけることが現状ではハードルが高いのです。これは安心R住宅という仕組みが広く社会全体に知られるようになることで解決することなので、“鶏が先かそれとも卵が先か”という状況にあると言えるでしょう。


また、専門家に住宅の“健康診断”であるインスペクションをしてもらう5~10万円程度の費用と、不適合箇所があった場合の補修工事費用が発生することにも抵抗感がある売主が少なくありません。自宅を売却するのにお金がかかるの?という違和感が強く、より高く売却するために少しコストをかけても良いと考える売主は少数派なのです。その働きかけをする不動産会社も、媒介契約を解除されてしまう可能性を考えると、コストをかけて売りましょうと強くは言えないので、こういった“売却コスト”を巡る心理的なハードルは決して低くはないのです。 さらには、まだ使える&壊れていない設備・機器でも法定耐用年数を超過している場合は、新品に交換する必要があることも、現実的なハードルとして存在します。こういった工事全般を考えると、ほとんどのケースで、一旦自宅から転居し“現空物件”として販売することが求められることもネックとされています。


仲介業務を行う不動産会社にも、安心R住宅の標章を活用し安心して購入できますとアピールできる点は大きなメリットなのですが、標章使用は調査報告書を提出して承認された個別の物件に対してのみであり、「安心R住宅取扱店」など事業会社を広告する手段として使用することはできませんし、安心R住宅を取得するための申請にかかる手数料などを別途請求できませんから、あくまで成約した際の仲介手数料のみが収益となります。

また、細かいことですが、専属専任もしくは専任媒介契約の更新ごとに、登録団体に対して「安心R住宅調査報告書」を作成・提出する必要もあります。また、成約後には既存住宅売買瑕疵保険の現場検査を手配し、検査適合証を取得しなければなりません。


このように主に手続き上の煩雑さが、安心R住宅の普及の課題であることは、制度設計した国も認識はしているのですが、一にも二にも“安心”であることを担保するには、これだけの手間がかかる&かけなければならないという姿勢に変わりはありませんから、不動産取引の現場とのギャップは決して浅くないと言えるでしょう。


それでも、前回ご紹介した姫路のアートランド・武本社長のように、不動産会社で物件を一旦買い取って安心R住宅の条件を満たしたリノベーションを行ない、検査も済ませて売却するという“買取再販”ビジネスに安心R住宅が数多く活用され始めていることも事実です。安心R住宅にかかる売主と不動産会社の手間とコストをどのように吸収し、ビジネスモデルとして成長・拡大させることができるのか、今、国の中古住宅流通に対する方針が問われています。

中山 登志朗(なかやま としあき)

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

出版社を経て1998年よりシンクタンクにて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間数多くの不動産市況セミナーで講演。
2014年9月にHOME'S総研(現:LIFULL HOME'S総研)副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。

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