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安心R住宅連載コラム 第六回(後編)

2024/04/17

安心R住宅連載コラム 第六回(後編)

#住まい #メンテナンス #リフォーム #リノベーション #省エネ

寄稿者

中山 登志朗

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

LIFULL HOME’S総研、兼安心R住宅認定団体「安心ストック住宅推進協議会」理事の中山です。

前回に引き続き、関西で数多くの安心R住宅を取り扱っている株式会社アートランドの武本社長へのインタビューをお送りします(前編はこちら)。 前編では、不動産会社が顧客から信用・信頼を得るための“武器”としての安心R住宅について、その実際を良く知る声を伺いましたが、後編は物件への評価が向上することでユーザーにも大いにメリットがあることが明らかになっていきます。

安心R住宅を取り扱うことのメリット:何より“安心して住んでもらえる”ということに尽きる

これまで数多くの安心R住宅を取り扱ってきた武本社長に敢えてそのメリットを伺ったところ、意外な答えが返ってきました。「メリットを経済的利益=儲けと考えるなら、それは決して大きくはありません。同業者がアートランドの物件を見た際にかなり手を入れたなという認識は持ってもらえても、一般ユーザーまではなかなか届いてはいません。ではなぜそこまで手を加えるのかというと、儲けを増やす=ビジネスとして利益を拡大させるということよりも、私自身が納得して物件を引き渡したいという気持ちが強いからです」と武本社長は語ります。

つまり、ユーザーもしくは社会からの信用・信頼が積み上がれば、経済的利益は自ずとついてくる、という考えです。そして安心R住宅はその信頼を得るため、物件を差別化してより魅力的にするための武器だと位置づけているようです。

武本社長は「気持ちを理解してくれる顧客が一人いれば良いというつもりでこれまで安心R住宅に取り組んできました。これからもアートランドのポリシーとしてユーザーに理解してもらえるように努力したい」とその意気込みを語ってくれました。


▲株式会社アートランド 武本社長

そして、その武本社長の考えや姿勢が、ある時結実します。それは「徐々に提携先の金融機関の担保評価が上がり、販売価格を適切なものとして時価評価してくれるようになった」ことです。インスペクションも瑕疵保険も、そしてリフォームにも相応のコストをかけて長年真摯に取り組んできた実績=信用が積み上がり、良いものを安心して売るために必要だと金融機関が評価してくれるようになったことで、物件の資産価値も結果的に向上させることになったのです。

これは安心R住宅を購入したユーザーにとっても非常に大きいメリットです。例えば、住宅を担保にして教育ローンやマイカーローンなど、新たな借り入れを起こす際にも有利に働きますし、物件を売却する際にも(居住期間中に適切な維持・管理を実施することによって)担保価値の高さがそのまま売却価格に反映されますから、武本社長は、住み心地の良さや安心感も含めて、最終的にそのメリットを購入したユーザーが享受できるものとして、安心R住宅を提供する“仕組み”を作り上げたことになります。


安心R住宅を当初から“リフレッシュ住宅”と命名した真意とは

武本社長は、住宅の買取再販ビジネスを開始した当初から、自ら手を入れてきれいにした住宅を“リフレッシュ住宅”と名付けて販売してきました。それは住宅が生まれ変わるだけでなく、住む人にも心機一転して気持ちよく住んでもらいたい、という気持ちを込めてのネーミングでしたが、最近はそのネーミングの意図するところが少しずつ変化してきていると語ります。

「自分たちの想定以上に中古住宅の再生・再利用という課題が社会的にも重要になってきており、安心R住宅として再生できるものはこれからも多く手掛けていくつもりです。ただし、最近は空き家を相続・所有しているが全く売れなくて困っているという相談が増えたので、もし安心R住宅として再生することが難しい場合でも更地にして新たな活用を考えるなど、案件に応じた最適解を見つけ“最後の砦”になりたいと思っています。それも不動産をリフレッシュする一つの方法ですから」と、現在の少子化、高齢化によって住宅が“負動産”となってしまうことを防ぐのもリフレッシュ=再生事業であるとの認識を示してくれました。


併せて、安心R住宅の購入を検討しようと思っているユーザーにもメッセージをいただきました。

「安心R住宅に関心を示されるユーザー各位は、情報感度が高く堅実なユーザーだと思います。ただそういうユーザーでも物件の詳細まではなかなか自分で確認したり調査したりすることはできませんから、この安心R住宅のマークが信頼できることを多くのユーザーに知ってもらい、安心R住宅の購入を是非前向きに検討してもらいたい」とのことでした。

そして国や自治体に対しても、実際に安心R住宅を手掛けている現場の声として「安心R住宅の制度が始まってから約6年経過していますが、この間認知度は圧倒的に低いままです。これだけ優れた制度なのに、ユーザーも(不動産会社も!)知らないことが多く、もっとこの制度を活用してもらうために、国も自治体も普及に努めて欲しい。兵庫県でも独自に『ひょうごあんしん既存住宅表示制度』を実施していますが、登録事業者が極端に少なく、安心して売買できる中古住宅市場を作ろうという機運は盛り上がっていないのが実情で、歯痒い気持ちです」と率直に話してくれました。 国交省の資料によれば、2022年度時点で年間1769件の流通実績、そしてこれまでの累計でも6913件に留まりますから、安心R住宅の普及は道半ばと言わざるを得ません。

これを打開するにはこの制度を数多くのユーザーに知ってもらい、そして賢明な価値判断ができるユーザーを育てることしか方法がない、とも武本社長は語ります。リフレッシュ住宅、そして安心R住宅の現場を以前から深く知る武本社長ならではの言葉は、安心R住宅の現状と課題を的確に示したものと言えます。


それでもコツコツと信頼を積み上げることによって、中古住宅の優良化・差別化に成功した武本社長とアートランドは、安心R住宅を武器にこれからも流通市場で独自の確固たるポジションを築いていくことでしょう。是非、住宅購入を検討しているユーザー各位は、安心R住宅を選択肢の一つとして検討していただきたいと思います。


安心R住宅連載コラム 第六回(前編)

中山 登志朗(なかやま としあき)

株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S総合研究所
副所長 チーフアナリスト

出版社を経て1998年よりシンクタンクにて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間数多くの不動産市況セミナーで講演。
2014年9月にHOME'S総研(現:LIFULL HOME'S総研)副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。

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